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週末、1,000店舗で調査を実施:店舗監査をパワーアップした大手ビールメーカーの事例

By Manu Krishna, Director, Content Marketing at Trax

週末になるとビールの売上が落ち込むという現象を不可解だと考えたあるブランドは、データを駆使したリアルタイムなアプローチで問題解決に乗り出しました。

複数の国で販売を行っている消費財のトップブランドであれば、さまざまな小売施策の問題を抱えているのも珍しいことではありません。現場チームが統括されていない、製品ポートフォリオが複雑、商品棚基準がバラバラ、などさまざまな問題があり、特に商品棚の在庫状況を手作業でカウントする従来の店舗監査では、管理が困難な状況でした。しかし、画像認識と営業チームの自動化ツールの登場によって、商品棚データのキャプチャと一般的な店舗状況の問題修正が容易になりました。成熟したCPG企業の場合、これらの手法を活用して、小売施策基準のベースラインとなる完全な監査を実行しています。

時には、新商品の発売の検証、新規プロモーションの実施状況の監視、あるいは特定の期間の売上減少に関する原因究明などを目的として、小売店のアカウントのランダムなサンプリングから迅速な「抜き打ち検査」を実施するケースもあります。しかし、すでにストレスの溜まっている現場チームが、時間のない中で、大きな規模で商品棚の状況を把握する作業はそれ自体が悪夢になりかねません。また、問題を修正するプロセスの導入もさらに大きな課題です。これこそ、世界最大のビールメーカーが直面した問題だったのです。

週末になると売上が落ちるナゾ

週末になると、ビールの売上は上がる。普通はそう考えます。しかし、ある世界的なビールメーカーはまったく逆の現象が起こっていることに気付きました。供給、あるいは需要の問題?それとも、他に文化的な問題があったのか?ブランドは調査に乗り出すことにしました。アメリカ、カナダ、ブラジル、中国、韓国などの主要市場を含む世界25都市を対象に、画像認識を搭載した売り場施策製品を使用してある週末、世界の1,000店舗でビールの一次売り場で観察を行いました。

正確かつ信頼性の高い商品棚データを収集

McKinseyが2016年に実施した「北米CPG」に関する調査によると、最も成功を収めた企業は、成果(売上高など)とアクティビティ(在庫切れの解消など)の両方をカバーする指標を使って、データ主体のアプローチで営業投資に取り組んでいることが明らかになりました。Traxの画像認識を活用ソリューションは、ペンと紙によるアプローチよりもはるかに信頼性と正確性が高く、特に大規模な作業を行う場合に有効です。

このシステムを使うことで、このビールブランドの在庫率と商品棚シェアには、3つの問題点があることがわかりました。

監視対象のすべての国の店舗で、このビールメーカーのブランドは5個のうち1個は在庫切れになっていたのです。消費者は商品棚にないものは買えないため、当然売上に響きました。

次に、商品棚シェアに関する問題も浮かび上がりました。メーカーのブランドの1つは、米国、カナダ、中国で最もインサイトフェーシングが高く、別のブランドはメキシコで圧倒的な占有率を誇っていました。しかし、これらの3つのグローバルブランドは、イタリア、フランス、ベルギーでは商品棚シェアが低いことがわかりました。

前回の調査では、監査を受けたすべての店舗で、ビールメーカーのSKUの平均67%が在庫切れになっていたのです。不思議なことに、ブラジル、米国、カナダなどの優位な市場でも高い在庫率を示していました。このインサイトを受けて、メーカーは主要市場における商品レンジを見直すことになりました。

グローバルな展開:国内、地域、現地の動向から学ぶ

ビールメーカーは、詳細な商品棚のインサイトを取り入れ、国内、地域、現地のビールの動向把握に力を注ぎました。中国では、商品棚に陳列されたブランド10個のうち6個が競合商品(通常は地ビール)であり、ローカル商品の需要が増えていることを示唆していました。一方フランスでは、このメーカーのSKUを置いていたのは、調査した店舗のわずか半分でした。この現象は、このメーカー固有のものではなく、他のビールメーカーについても同様で、フランスでビールの需要低下によるものだということがわかりました。

こうした地域に応じたインサイトにより、メーカーは物流や市場投入戦略を調整し、地域市場での競争力を高めることができました。

この調査では、競合他社のパフォーマンスに関する貴重なインサイトも明らかになりました。たとえば、イギリスでは、監査対象の店舗ではすべて、当メーカーのSKUの1つを置いていましたが、これは他の競合他社トップ3についても同様でした。つまり、イギリスでの当メーカーの市場投入戦略では、水平的なプレゼンス(リーチ)よりも垂直的プレゼンス(フェーシング)を強化するべきだということを示唆しています。

前例のない規模でのインサイト

従来は、ここまでの規模でこのようなソリューションを導入する場合、工数とコストがかかり、インサイトを得るまでの時間もかかりました。売り場施策の視覚的な証拠がなければ、こうしたインサイトは完全には信頼できなかったかもしれません。

しかし、実際の店舗の画像から導き出されたデータ主体の分析によって、当ビールブランドは実行可能なインサイトを得て、国や地域、ローカル戦略で差別化を図ることができました。これが、店舗との交渉力や競争力を高めることにもつながりました。さあ、1杯。思わず飲みたくなるほど、価値ある情報を得られたのです。

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